会長あいさつ

 このたび、多くの皆さまからご推挙いただき、第13代日事連会長に就任することになりました京都会の上野浩也です。全国の約14,000社余りの建築士事務所の団体の代表に就任させていただくことは光栄なことでありますが、その重責に身の引き締まる思いです。


 本年は元日に能登半島地震が発災しました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆さまに対して心よりお見舞い申し上げます。


 さて、世の中は、DX化が進み、建築設計も手書きからCAD、そして現在はBIMへと変化しています。今後はAIを活用した業務へと変革していく中、時代の流れに対応した建築士事務所のあり方を模索していかなければなりません。また、地球環境に配慮した再生可能エネルギーの活用も私たちに課せられた大きな責務です。令和7年4月からすべての建築物の省エネ化が義務となり、私たちの業界には大きな期待と責任が課せられることになります。時代の流れの中で変化に柔軟に対応できる日事連にしていかねばなりません。サスティナブルな社会に対応する日事連が、都道府県の建築士事務所協会やその会員にタイムリーに情報提供することで、それぞれの業務の発展につながっていくと思います。

 

  また、大都市は官公庁工事に加えて民間工事が多くあります。しかし、地方都市の主軸は官公庁工事です。近年、地方では公共工事の低価格入札が多く見られます。一方、「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」(通称品確法)が本年6月19日に公布・施行されました。令和元年の法律改正では調査・設計業務が広く品確法の法律に位置付けられており、本年はより一層将来にわたる公共工事の品質確保・持続可能な建設業等を実現するべく強化されています。特に低価格での落札はその品質を落としかねない危険性を有しています。公共工事の品質を確保することは、自ずと適正な落札価格につながっていきますので、品確法の基本理念を各行政に理解していただかなければなりません。そのためには、日事連も事務所協会と一緒に行動していかなければならないと考えています。地方のことや各事務所協会のことを地域の問題と片付けず、地方の声に耳を傾けて、事務所協会とともに積極的に活動しなければ地方は疲弊すると思います。


 そして、業法の確立と入会義務化は連合会創立時からの悲願であり、日事連の活動の「錦の御旗」です。平成26年6月に日事連、建築士会連合会およびJIAの建築設計三会合同で要望した建築士法の改正が議員立法で提出され、成立したことはご存じの通りです。しかしその後は議論さえされなくなりました。昨年度からようやく業法的な要素を取り入れた建築士法の改正の議論を法制度対応特別委員会でスタートしました。引続き議論をし、建築設計三会をはじめとする業界団体のご理解とご賛同を得て、業法の内容を盛り込んだ建築士法の改正に力を注いでいきたいと思います。


 日事連の次の世代を担う若い人材の発掘と登用も、急務です。日事連では毎年、全国大会にあわせて若い世代が集まる青年話創会を開催しており、業務の未来について大いに議論されています。青年話創会での議論が今後の私たちの業界の未来に直結すると考えておりますので、引き続き若い世代への投資をしていきたいと思います。また、熊本大会から女性交流会もスタートしています。近年の建築士試験の女性の合格者は年々増加傾向にあります。女性建築士の活躍は、建築設計業界にも不可欠だと思いますので、こちらも引き続き支援をしていきたいと思います。


 日事連は60年以上続いた長い歴史があり、守り続けなければならないところも多くありますが、時代とともに大胆に変えていかなければならないところも多くあると思います。今、何が必要なのか、何を残し、何を変えていくべきなのかを皆さんと議論して、これからの時代に対応できる新しい日事連を創っていきたいと思います。私自身、当たり前の表現ですが浅学非才の身であり、所属しているのも大きな事務所協会、また大きな事務所ではありません。皆さんにお支えいただかなければ何もできません。しかし、正直者が馬鹿を見るような業界には、決してしてはならないのです。皆さんと一緒に考えて検討し、精一杯職務を遂行させていただきますので一層のご支援をお願い申し上げます。


上 野  浩 也

 

令和6年6月26日
一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会

会長  上 野  浩 也

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