日本建築士事務所協会連合会
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平成19年10月2日

三栖会長が国土交通大臣へ 
「改正建築基準法施行の円滑な運用等に関する要望」を行いました

■ 和泉住宅局長(左)へ要望書を手渡す日事連三栖会長(右)ほか ■


 日事連は10月2日、「改正建築基準法施行の円滑な運用について」国土交通省に要望しました。日事連からは三栖会長、山本副会長、山口副会長、伊藤副会長、山崎副会長ほかが対応し、国土交通省側は、和泉住宅局長、小川大臣官房審議官、水流建築指導課長他担当官3名が応対しました。

 日事連の要望内容は下記の通り、1.制度の運用に関する要望事項として7項目、2.制度の改善に関する要望事項として7項目の合計14項目となっています。

 要望事項を補足するものとして先に建築士事務所協会会長を対象に行った「建築確認に関する緊急アンケート調査結果」も提出して説明しました。

 国土交通省からは、この要望事項に対し事前に検討、準備された別添の「(社)日本建築士事務所協会連合会からの「改正建築基準法施行の円滑な運用等に関する要望」に対する回答」が示された他、9月28日付けで「改正建築基準法の円滑な施行に向けた更なる取組について」をホームページに掲載したこと等の説明がなされました。

 国土交通省への要望後直ちに国土交通記者会で一般報道記者及び専門紙記者に対し会見を行いました。

 
■ 国土交通省への説明 ■           
■ 記者発表 ■   

平成19年10月2日

国 土 交 通 大 臣
冬  柴  鐵  三  殿 

社団法人日本建築士事務所協会連合会
会  長  三  栖  邦  博 

改正建築基準法施行の円滑な運用等に関する要望

 常日頃、当連合会の活動につきましては多大なご理解とご指導をいただいていますことに深く感謝申し上げます。また、現在国におかれましては、改正建築基準法の円滑な運用に日夜ご尽力いただいていることに敬意を表する次第です。

 さて、6月20日の改正建築基準法の施行により建築確認審査などが大幅に厳格化され、建築設計の現場や確認申請の現場では大きな混乱がみられ、建築確認審査の手続きが大幅に停滞しております。この停滞は、建築確認審査の手続きばかりでなく、建築工事の停滞や開発プロジェクトの停滞などに広がり、建築関係に止まらず大きな社会問題となりつつあります。

 これら大きな混乱となっている要因としてはいろいろ考えられますが、例えば、確認申請図書については軽微な不整合を除き補正不可とされるなど法律で想定される以上に政省令、告示等で厳格な運用基準が定められたこと、その原案作成に当たって建築設計等の現場に精通した者の意見が十分反映されなかったこと、その制定から施行までに十分な周知期間がなく、申請者(建築士事務所)及び審査者(特定行政庁等)双方が十分内容に習熟することができなかったこと、運用の細部や取り扱い方針などを含んだ解説書等の刊行が遅れたこと等があげられると考えます。

 建築物の安全性確保の必要性は十分理解するのですが、このままの状況が続きますと、私ども建築設計関連業界はもちろん建設工事や不動産の関係業界さらには広く国民を含めた社会全般に大きな経済的損失が広がるとともに、建築士事務所をめぐる経営状況は厳しさを増し、まさに死活問題となってまいります。

 また、過剰な厳格化は確認申請にとどまらず、建築では常態的に発生する建築主の要請による工事途中での計画変更さらには完成後の供用段階で必要となる増改築を困難にするなど、建築主に不利益を生ずるだけでなく、地球環境維持の観点から不可避な建築物の長期供用を阻害するおそれもあり、特段の配慮が必要と考えます。

 法施行後の確認手続きの状況を踏まえ、国におきましても建築確認手続きの円滑化を図るため、例えば特定行政庁等に対し当分の間、事前相談について対応するよう求めるなど、様々な取組にご尽力されております。

 当連合会としましては改正法施行後の3ヶ月間、行政に協力しつつ事態の推移を見守ってまいりました。しかしながら、連合会を構成する単位会からの制度の改善等の要望は依然大きく、このたびこれらの要望や生の声を集約し、下記のとおり制度の運用に関する要望と制度の改善に関する要望をまとめました
 つきましては、以上のような事情を十分お汲み取りいただき、これらの要望についてその実現にご配慮をいただけるよう切に要望いたします。

I.制度の運用に関する要望事項

(1)特定行政庁及び指定確認検査機関(以下、「行政庁等」という)に対し、早急に「手続きの円滑化」の徹底と対応の統一を実現していただきたい。

 ・国が行政庁等に呼びかけている「手続きの円滑化」が徹底されておらず、同一県内の県、市、指定確認検査機関でさえ対応が全く違うケースが報告されている。

 ・行政庁の中には計画(意匠)については事前相談は受けられるが、構造(適合性判定)については受けられないところがあり、事前相談の意味をなさないとの報告がされている。

 ・国が公表しているQ&Aの内容を全く知らない窓口担当者がいることが報告されている。

 ・「軽微な不備」の具体的な判断ができない窓口担当者により、不当な対応をされた例が多く報告されている。

 ・指定確認検査機関において、本来は確認検査機関が行うべきチェックリスト(告示第885号)の提出を実質的に申請者(建築士事務所)に強要している機関があることが報告されている。

(2)指定構造計算適合判定機関(以下、「適判機関」という)の適合判定員の審査のバラツキを最小限とし、対応の統一を図るよう指導していただきたい。

・構造計算の法適合性を判定しているのか、構造計画の妥当性を評価しているのかわからないような指摘をされたケースが報告されている。

・判定員がマニアックで判定員個人の考え方を押し付け、構造設計者の考え方や手法は認められず、却下されてしまうケースが報告されている。

(3)適判機関に対する事前相談が直接できるように指導していただきたい。

 ・適判機関がどのような考え方や運用解釈をするかを事前にわからないと、的確な対応ができない上に、(2)で述べたようなケースが出た場合に予定外の時間がかかり、スケジュール管理ができない。

 

(4)早急に「目安箱」を設置していただきたい。

 ・「手続きの円滑化」の徹底を図るために、建築確認審査に関して不当若しくは納得のいかない対応を受けた申請者(建築士事務所等)が、対応の内容を直接国に訴えられる「目安箱」を設置していただきたい。

・国は、ここに寄せられる情報を注視して、必要な場合には個別指導を実施していただきたい。

(5)行政庁等での事前相談は、期間限定ではなく恒久的に実施を認めていただきたい。

 ・申請の正式受理後での審査が厳格に行われていれば、事前相談が行われても適正な審査そのものに支障はないと考える。むしろ、事前相談が適正に行われることにより、その後の正式な審査が円滑かつ適正に行われるものと考えられる。

 ・事前相談が当分の間という期間限定ではその後大きな混乱が予想される。円滑な手続きが継続的に維持されていくためにも他の分野の申請手続きでも認められているように恒久的な取り扱いとしていただきたい。

(6)一般国民に対する建築確認審査の厳格化の周知徹底を早急に実現していただきたい。

 ・国民への周知については再三要望してきたが、残念ながら建築主等一般の国民への周知はされておらず、また、理解もされていない。都道府県や市町村職員でさえ今回の改正による厳格化をまったく理解されていない例が多く報告されている。関連業界団体や経済団体へのアナウンスだけでは、不十分である。

 ・新制度は、従前に比べて時間と金銭負担が大幅に増えたことを一般国民に対して国が直接説明する責任がある。

 ・国があらゆるメディアを通じて責任をもって周知広報を行うべきと考えるが、市町村や都道府県の市民向け広報誌などを通じて制度の改正について周知、広報を行うよう、関係機関に強く働きかけていただきたい。

(7)Q&Aをさらに使いやすいようにキーワードによる検索ができるように改善していただきたい。

 ・Q&Aの項目は既に膨大であり、さらに増加している状況で、申請者(建築士事務所)及び審査者(行政庁等)は日々の業務に追われ、その内容の更新に追いつけない実情がある。そのため日々の業務の中でスピーディにかつ的確に内容が検索できる仕組みが必要である。

II.制度の改善に関する要望事項

(1)建築確認申請図書の不整合の修正と差し替えに関する合理的な対応が可能なように指針の改正をお願いしたい。

 ・法改正に伴う告示では申請図書は軽微な不整合を除き補正は不可とされたが、国も告示やQ&Aの内容を複数訂正しているように、ヒューマンエラーは避けられない。申請者側のみに責任を押し付けることは一方的である。特に今回の改正により、提出しなければならない書類が大幅に増え、注意に注意を重ねても避けられない可能性がある。悪質で作為的な場合を除き、不整合の修正と差し替えは従前どおり認めていただきたい。

   

(2)認定書の写しの添付を廃止し、「認定番号の表示」を原則にするように指針を変更していただきたい。

 ・認定書は、基本的には認定申請者(製造事業者)等と認定者(大臣)との間の資料であり、個々の申請者にその写しを求めるのは過大な負担であり、効率的でない。本来、審査側が認定内容については申請者に提出させるのではなく、審査側で容易に認定書等の資料を確認できるような制度設計をすべきである。

・したがって、基本的には申請図書に判断に必要な最低限のスペックと認定番号を記載することで可としていただきたい。これで判断できない場合にはカタログ等の必要な部分の写しを添付することで可とする取り扱いとしていただきたい。 

 ・なお、認定書の写しを当該業者に請求することが1社指定のように受け止められて、その後の価格交渉に支障が出てコスト高につながる懸念がでている。

(3)軽微な変更の基準を緩和し、仕様、材料、設備等の「同等品」への仕様変更を「軽微な変更報告書」の対象から外すことを指針の中で明記していただきたい。

 ・認定「同等品」とは認定されたものと同等の範囲にあるものであって、その範囲内にあるものに確定するに過ぎないので変更には当たらないものと考えられる。したがって、「軽微な変更報告書」の対象から外していただきたい。

 ・現在同等品の取り扱いについてはQ&Aでは記載されているが、その取り扱いは極めて重要であり、統一的な運用が必要であることから、きちんと指針の中で取り扱いを明示されたい。

(4)「申請取り下げ」と「再申請」に関する合理的な手順を明示するとともに申請料の二重請求を排除していただきたい。

 ・確認申請料、適合判定料を納付し申請したが、適判機関へ回付される前に「適合するかどうかを決定することができない旨の通知(無期限通知)」を受けた。しかし適合判定料は返金されなかった例が報告されている。

 ・今回の告示で、軽微なものを除き申請図書の補正が認められなくなったため、補正のためには申請を取下げ、再申請せざるを得なくなり、二重に申請料が求められている例が報告されている。他の分野の申請においては申請書類の補正が認められており、申請料が二重に求められる例は聞かない。これは建築主等への過大な負担であると考えるが、排除を指導していただきたい。

・構造計算書から構造図への数値転記ミスが2箇所あり「取り下げ」となって「再申請」したが、新たな申請料が求められている。1回目とは別の適判員が担当で、別の追加資料を要求されキングファイル1冊分の追加資料を提出した。この間、再度「消防同意」を行っている。この申請は5月末から事前審査を行い6月28日に申請しているが、9月19日になって確認が下りている。このような例が報告されているが、このようなことを避けるためにも合理的な手順を明示すべきである。

(5)構造計算適合性判定(ピアチェック)の対象となる建築物について高さ、階数で対象を限定するよう見直しをしていただきたい。

 ・今回の法律改正の周知段階では、その対象が、RC造で高さ20m以上、S造で4階以上等その他これに準ずるものとされていたが、政省令の制定段階で対象が拡大され、結果的には高さ、階数に限らず小規模な建築物でも、いわゆる「ルート2」以上の構造計算をするものは全て対象となったが、事前にそのような説明が周知されていないため、設計の現場では混乱が生じている。

 ・昭和56年以来の一般的な構造計算方法で全国の申請者と行政庁等で申請と審査が行われてきたものが否定されたことになるが、このような建築物の多くは引き続き行政庁等が自ら審査すべきであり、そのような力量を備えるような施策を講じることが先決である。そして特に高度な構造計算を行う建築物を中心にピアチェックの対象とすべきと考える。

 ・ピアチェックの対象となることを避けるために、公共福祉施設の構造計算を「ルート1」にするように指示を出した自治体のケースが報告されている。

・ピアチェックの対象となる建築物の範囲が広いことによって、一般的な建築物がそれを避けるため安易な方向に流れ、建築本来の機能性、芸術性、経済性が阻害される危険性が表面化しはじめており、本末転倒の状況である。

(6)工事中の計画変更申請は、従前どおりの合理的な方法が可能なように指針を改めていただきたい。

 ・工事中に多くの計画変更が生じるのは、経済活動としての建築生産では常態的に起こることである。

・工事途中での計画変更は、変更ごとに簡単な報告書だけを提出しておき、完了検査前にまとめて正式な計画変更の確認申請を行い、その申請に基づいた完了検査を行えば問題はないと考えられるので、そのような取り扱いができるようにしていただきたい。また、この場合の変更にかかるピアチェックは簡素化されたルールを設けていただきたい。

(7)既存不適格建築物の増改築の基準見直しをしていただきたい。

 ・増改築部分が床面積の1/2を超える場合、既存部分の構造はたとえエキスパンションジョイントを設けても完全に新基準に合致しなければならないとされた(H17改正)。現実的には、完全に新基準に合致させることが不可能な場合や合致しているか否かの判断が困難な場合も多い。

・さらに、適判機関が適正に判断できるか否かが疑わしい場合には、構造一般評定を受けるか、増改築をあきらめて既存建築物を解体の上、新築するか、完全別棟にする以外、方法がない状態となっている。

・また、増改築部分が床面積の1/2以下であって1/20を超えれば、エキスパンションジョイントを設けても既存部分について耐震診断を受けなければならない。このことについて建築主の理解が得られず、小規模な増改築も実質的に困難となっている。

・このままでは、増改築そのものが実質的に進まず、環境改善上問題が生じるので、今回の法改正にあわせ、この規定を現実味のあるものにするため、基準を緩和する方向で見直しをしていただきたい。

                         以上


 

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